ピアニスト中村紘子

今月は、NHKとテレビ朝日の「題名のない音楽会」で先月お亡くなりになったピアニスト中村紘子さんの追悼特集がありました。

中村紘子さんの逝去の知らせは日本のクラシック界に衝撃を与え、私自身大きなショックを受けました。

中村紘子さんの執筆された「ピアニストという蛮族がいる」という本は高校生の時に出会いました。

過去の偉大な名ピアニストや指揮者達、そして日々のレッスンでは知り得ないヨーロッパの音楽情勢や様々な演奏法について目を向けるようになったのはこの本がきっかけです。

興味深い記述が沢山あり、ピアニストから自身の祖国ポーランドの首相にまで登りつめたパデレフスキや明治時代に活躍した日本の女流音楽家達の存在を知ったのもこの本でした。

中村紘子さんの生の演奏を聴いたのは2年前の牛久でのリサイタルが最後でした。

全国ツアーのはじめての地だったせいか演奏に本調子ではない印象を受けましたが、聴き手に伝えようとする強いエネルギーや作曲家が楽曲に託した思いを伝えようとする熱い思いの感じられる演奏には表現者としての力を感じました。

奏法や音質などの云々ではなく音楽の本質を受け取ったように思います。

中村紘子さんが創設された浜松国際ピアノコンクールは世界的な大コンクールへと成長し、浜松国際ピアノコンクールの覇者からチャイコフスキーコンクールやショパンコンクールの頂点に立つ若いピアニストがでるようになりました。

2005年のショパンコンクールの優勝者ラファウ・ブレハッチが世界的に注目されるようになったのは浜松国際ピアノコンクールでの演奏でした。

ポーランドから出てきた当時無名だったブレハッチを現地の日本人がサポートした話は、当時実際に本選まで支えた方に伺い印象に残っています。

中村紘子さんは戦後から今日までの長きに渡り日本のクラシック界の発展に大きく尽力されました。

今改めてその存在の大きさを感じています。